脳腫瘍は頭蓋骨の内側にできる腫瘍の総称です。
脳腫瘍はどの年齢にも発生しますが、子供の脳腫瘍は白血病についで頻度の高い腫瘍で、大人の脳腫瘍は30~40才代の働き盛りによく発生します。その中でも悪性度の高い神経膠腫や肺ガンなどが脳に飛び火した転移性脳腫瘍をあわせて悪性脳腫瘍とよびます。
脳を包んでいる膜にできる髄膜腫、下垂体にできる下垂体腺腫、耳の神経にできる聴神経鞘腫などを良性脳腫瘍とよんでいます。
脳腫瘍の症状には、すべての腫瘍に共通したものはありません。できた場所ごとに症状が違ってくるのです。腫瘍がしだいに大きくなるので、それに伴って症状もしだいに進行し悪化していくという特徴がみられます。
髄膜腫は、髄膜とくにクモ膜から発生する良性腫瘍です。この腫瘍はクモ膜が存在する部位ならどこでも発生します。髄膜腫は良性の腫瘍ですから腫瘍の全摘出により治療させることができます。
下垂体前葉に発生する腫瘍を下垂体腫瘍とよび成人にみられる良性腫瘍です。
下垂体は脳底部でトルコ鞍の中に存在するホルモンの中枢です。その前葉からは成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、プロラクチンなどを分泌します。これらのホルモンは視床下部から下垂体門脈系を通って送られてくる放出促進ホルモンと抑制ホルモンによって調節されています。したがって下垂体前葉、視床下部が障害されるとこれらのホルモンの分泌が障害されます。下垂体前葉の働きを障害し内分泌障害をおこすと同時に視神経圧迫による視力障害をきたします。
最も多い視力障害は視野障害で半盲状態になることが多いようです。内分泌障害では女性は無月経、男性では性欲低下をきたします。
神経膠腫は脳の実質から発生し、脳腫瘍の1/3を占め、最も頻度の高い脳腫瘍です。これは脳の神経細胞を支えるグリア細胞から発生し腫瘍細胞が正常な脳組織の中へ広がっていくので悪性です。
症状は頭痛、吐きけ、嘔吐をおこします。その特徴は症状が常に進行して強くなっていくことです。神経膠腫は手術で全摘出することができませんので、術後に放射線療法が必要になります。
ガンは原発巣からほうぼうへ転移することはよく知られていますが脳に転移すると転移性脳腫瘍を発生することになります。
転移性脳腫瘍の原発巣としては肺ガンが半数以上を占め、乳ガン、甲状腺ガン、腎ガン、消化器ガンがこれについでいます。、乳ガン、甲状腺ガン、前立腺ガンは頭蓋骨へ転移することが多く、消化器ガン特に胃ガンは髄膜へ転移してガン性髄膜炎をおこしやすいのです。
症状は、片マヒ、言語障害、視力障害、ケイレン発作などをきたします。